TCFD提言に基づく情報開示
当社グループは気候変動問題への取組みをマテリアリティのひとつとして位置付け、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下「TCFD」)の提言に基づき情報開示を進めてまいります。
ガバナンス
気候変動に係る重要事項については、サステナビリティ委員会において審議され、取締役会に報告・提言を行っております。また、気候変動が事業に及ぼしうるリスクと機会の識別・評価は、サステナビリティ委員会の指揮監督のもとサステナビリティワーキンググループが実施しており、外部環境の変化や事業の状況に応じて適宜見直しを行います。
戦略
当社グループでは気候変動が経済や社会にもたらす短期・中期・長期にわたる影響をTCFD提言のフレームワークに基づき想定したうえで、当社グループの主要事業である消防車輌事業および防災事業にとって特に重要であると考えられるリスクと機会を特定しました。
特定した各リスクと機会が当社グループに与える財務影響を、気候変動への対応や規制が強化されることが想定される2℃未満シナリオと、災害の甚大化がより深刻となることが想定される4℃シナリオに分けて検討しました。
また各リスクと機会についてはその財務的影響と発生可能性を考慮し、当社グループとしての事業インパクトの重要性を評価しています。
検討に必要な情報の取得にあたってはIEA(International Energy Agency)WEO 2022 Net Zero by 2050 やIEA ETP2020等を参照しました。
各シナリオ下における事業環境の認識と、事業への影響の概要は以下のとおりです。
2℃未満シナリオ
気温の上昇を抑制するために気候変動関連の規制や対応が進み、社会全体として低炭素社会に進むことで、炭素税をはじめとした移行リスクが主に顕在化する以下の事業環境を認識しています。
【概要】
各国で気候変動への対応が積極的に行われ、CO2排出量規制や炭素税の導入といった政策が進む。各企業はその対応コストやサプライヤーからの価格転嫁に対するコスト負担を強いられる可能性が高い。
【事業環境の変化】
クリーンエネルギーへの転換や脱炭素につながる技術革新により顧客意識の変化が生じ、低炭素社会へ貢献できる製品やサービスに対する需要が増加する。特に自動車においては排ガス規制や電動化が進展する。
当社グループの主要事業である消防車を含む特種用途自動車でも電動化が進み、より環境負荷の低い車両に対する需要が高まることが想定される。また消火薬剤に対する規制の拡大やリサイクルの重要性が増加する。
4℃シナリオ
積極的な気候変動への対応がとられないことで気温上昇に歯止めが効かず、洪水や高潮といった自然災害の激甚化などの物理リスクによる影響がより深刻となる以下の事業環境を認識しています。
【概要】
気候変動に関する規制や政策が積極的にとられず、環境への規制は事業に対して大きな効果を及ぼすには至らない。その一方で気温の上昇に伴い、大規模な自然災害が頻発し被害の甚大化が想定される。
【事業環境の変化】
自然災害によりサプライチェーンが寸断され、生産に必要となる部品調達が困難になる可能性がある。また海面上昇の影響を受けやすい場所にある生産拠点に対する直接的なリスクが上昇する。
一方で災害の頻発に伴い、防災の重要度も同時に高まることから防災・災害復旧に関わるソリューション提供の機会が増加することが想定される。
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【気候変動による当社グループへの影響】
リスクと機会 | タイプ | 影響要因 | 当社グループへの主な影響 | 想定時期 | 事業影響度 | 対応方針 | ||
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2℃未満 | 4℃ | |||||||
リスク | 移行リスク | 規制 | 炭素税の導入 | 低CO2対応機器の新規開発等による追加コスト増大や、炭素税負担によるコストの増加 | 中期 | 中 | - |
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技術 | 環境負荷の低い製品への移行 | 電気自動車等の環境負荷の低い車両の開発遅れによる販売機会の損失 | 短~中期 | 中 | - |
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市場 | 調達コストの増加 | 炭素税価格の転嫁による部品や車両本体の調達コストの増加 | 中期 | 大 | - |
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物理リスク | 急性 | 異常気象の重大性と頻度の上昇 | 洪水や台風に起因するサプライチェーン寸断による販売機会の損失 | 中~長期 | 小 | 中 |
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製品 および サービス |
低排出量商品およびサービスの開発・提供 | 省エネルギーにつながる燃費性能のよい車両の開発・提供による販売機会の獲得 | 短~中期 | 中 | - |
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気候適応、強靱性に対するソリューション開発 | 減災・災害復旧に繋がる災害対策品の提供による販売機会の拡大 | 中~長期 | 小 | 中 |
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R&Dおよび技術革新を通じた新製品開発 | 消防機器を電動自動車、天然ガス車等、低排出車両へ搭載可能にすることによる販売機会の獲得 | 中期 | 中 | - |
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市場 | ステークホルダーのESGへの関心の高まり | 環境配慮を含めたESG関連評価向上に伴う企業価値の向上 | 中~長期 | 中 | - |
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※想定時期の定義 短期:3年未満 中期:3年以上、10年未満 長期:10年以上
※財務影響の定義 小:1億円未満 中:1億円以上、10億円未満 大:10億円以上
リスク管理
気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ委員会の指揮・監督のもと、サステナビリティワーキンググループにおいて事業に影響を及ぼし得るリスクの識別・評価を、シナリオ分析を用いて実施しております。
そこで重要と判断されたリスクの事業への影響度および適応策についてはサステナビリティ委員会において審議・協議され、取締役会へ報告・提言を行っております。
指標と目標
気候変動リスクを低減し、脱炭素社会に貢献するにあたって、当社グループではGHG排出量を指標の一つとして設定し、管理に取り組んでおります。今後はGHG排出量の算定結果を踏まえ、再生可能エネルギーの活用や、リサイクル率の向上を通して、GHG排出量の削減に積極的に取り組んでまいります。
当社グループのGHG排出量の実績を下図に示します。
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GHG排出量
Scope | 2022年度排出量(t-CO2) | 2023年度排出量(t-CO2) | 2030年度目標 |
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Scope1 | 4,678 | 4,918 | 22年度比42%削減 |
Scope2 | 6,546 | 6,620 | |
Scope1+2 | 11,224 | 11,538 |
Scope1:自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
対象範囲:モリタホールディングスおよび主要連結子会社