project story
プロジェクトストーリー
EV化とDXで消防の未来を変える、
EV消防ポンプ自動車・
指揮支援システム開発プロジェクト
PROLOGUE
近年、地球温暖化や気候変動への対応は世界的に加速し、
その流れは消防・防災の分野にも及んでいる。
こうした背景のもと、モリタグループでは
2019年に消防車両の電動化に向けた基礎研究を開始。
その後、EV消防ポンプ自動車の開発プロジェクトや、
未来社会における最適な消防活動を見据えたAI活用による
指揮支援システム開発プロジェクトが立ち上がった。
さらにその動きは勢いを増し、
2025年「いのち輝く未来社会のデザイン」を
テーマとする大阪・関西万博への協賛に向けて、
より大きなプロジェクトへと発展していった。
これは、消防の未来を切り開く2つのプロジェクトの物語である。
MEMBER
プロジェクトメンバー紹介
EV消防ポンプ自動車開発チーム
-
M.S.
株式会社モリタ
商品開発部 開発一課
2003年入社EV消防ポンプ自動車開発チームのリーダー。モリタ初のEV仕様の消防車開発に早期から関わり、日本で初めて実運用された車両の開発にも中心的役割を果たした。 -
W.K.
株式会社モリタ
商品開発部 開発三課
2017年入社EV消防ポンプ自動車開発の要となる制御全般を担当。求められた性能を発揮するため、ポンプやバルブの電動化を進め、それらを効率的に動かす制御プログラムも開発した。
指揮支援システム開発チーム
-
Ta.H.
株式会社モリタホールディングス
モリタATIセンター 開発企画室
2005年入社AIを活用した指揮支援システム開発チームのリーダー。システム全体のグランドデザインから、プロジェクトの推進役として、メンバーの統括、開発の指揮を担った。 -
T.K.
株式会社モリタ
商品開発部 開発二課
2015年入社機械分野のエキスパートとして、指揮支援システム開発に参加。主にハードウェアの機械設計を担当。電気系・制御プログラム開発メンバーと連携し、指揮支援システムの開発における多くの課題解決に貢献した。 -
To.H.
株式会社モリタホールディングス
モリタATIセンター 開発企画室
2024年入社EV消防ポンプ自動車・EV指揮車のグラフィックデザインを担当。モリタグループのブランドイメージを取り入れつつ、それぞれの特徴を引き立てるデザインで人々を魅了した。
section.01
プロジェクトの始動
section.02
第一号車の完成と、
システム開発の本格化
section.03
プロジェクトの転機となる
大阪・関西万博への協賛
section.04
車両とシステムの完成
epilogue
実運用・実証実験を経て
得たものと未来への挑戦
section.01
日本初の実運用EV消防ポンプ自動車の
開発と未来の防災システムを構築する
プロジェクトが始動
地球温暖化対策やカーボンニュートラル実現に向けた流れを受け、モリタグループでは市場の動向を注視しながら、2019年からEV消防車の基礎研究を開始。2021年にはEV消防ポンプ自動車の実用化を目指すプロジェクトが立ち上がった。フィンランドのグループ会社 Bronto Skyliftでの駐在からの帰国後、本格的にプロジェクトへ加わったのがM.S.である。
一方、2022年にはもう一つのプロジェクトが始動する。多様化・複雑化する災害への対応、人口減少による消防隊員の不足・高齢化といった課題を、デジタル技術で解決する防災ソリューション創出に向けた試みである。開発リーダーに任命されたのは、モリタATIセンターで未来技術を活用した災害現場の課題解決に取り組んできたTa.H.だった。
Ta.H.
私たちが目指したのは、データサイエンスやバイタルセンシングなどのデジタル技術を用いた情報提供と、AIによる判断支援により、災害現場で活動する消防隊員の皆さんを安全かつ効率的に支援するシステムの実現でした
こうして、EV消防ポンプ自動車の実用化を目指すプロジェクトと、デジタル技術を活用した防災ソリューションを生み出すプロジェクトは、それぞれのテーマの実現へ向けて動き出したのであった。
section.02
EV消防ポンプ自動車の第一号車が完成。
AIを活用した指揮支援システムの開発も
本格化していく
2021年から先行していた、M.S.が率いるEV消防ポンプ自動車開発チームは、従来のエンジン車を前提に設計されていた仕様を、すべてEV用へ置き換えるという前例のない挑戦を続けていた。特に課題となったのは、これまでエンジンで駆動していたポンプをバッテリーから電力を供給するモーターで動かした際に、エンジン車と同等の長時間かつ高出力を維持できるかどうかという点。加えて、エンジン車に匹敵しうる容量を持つバッテリーは、当時どのメーカーからも提供されていなかった。
そうした状況下で、エネルギーを無駄なく効率的に使う方法を探り続けた結果、2023年に1号車が完成。同年6月に開催された「東京国際消防防災展2023」で、「MoEVius concept(メビウス・コンセプト)」として披露された。国内初のEV仕様の消防車であることに加え、バッテリーエネルギーを考慮した設計で大流量かつ高効率を実現したEV専用水ポンプや独自の制御システムなどは業界から大きな注目を集めた。
同じ2023年、Ta.H.が主導する未来の防災ソリューションの開発にも大きな進展があった。Ta.H.が1年をかけてグランドデザインをまとめるなかで、EV指揮車と指揮卓を中核に据え、AIを活用した高度な指揮支援システムの構想が生まれ、実機の開発フェーズに移行したのである。この段階から、モリタで機械系技術開発の経験を持つT.K.がプロジェクトに参加。
T.K.
指揮支援システムの中心となるソフトウェアの知識は十分ではありませんでしたが、制御プログラム担当のメンバーと連携し、私はハードウェアの知見をどう活かすかを考えながら取り組みました
T.K.は、従来の知識・経験にとらわれない新たな発想の必要性を感じ、託された期待に応えるべく開発に没頭していった。
section.03
大阪・関西万博への協賛を機に、
プロジェクトが一つに。
メンバー一人ひとりが、
より困難な課題に挑み続けた
EV消防ポンプ自動車第1号車の披露後も、開発チームは次なるフェーズである実運用に向けて開発を継続していた。
また、指揮支援システムの開発チームも同様に、着実に開発を進めていた。そんななか、両プロジェクトの転機となる動きがあった。2025年に開催される大阪・関西万博への協賛として車両や指揮支援システムを提供し、会期中に会場内でのEV消防ポンプ自動車の運用および指揮支援システムの実証実験を行うことになったのである。
これを機に、EV消防ポンプ自動車開発チームでは2号車の開発に着手。M.S.は開発責任者として、実際に万博会場で車両を運用することとなる大阪市消防局と協議を重ね、現場で求められる要望を仕様に落とし込み、各部門のメンバーへ共有した。
M.S.
EVであってもエンジン車と同等の消火活動が行えることは当然として、“EVは消防車に適さない”という一般的なイメージを覆す、EVだからこその性能を発揮することが求められました
新たな発想が求められるなか、特に難しいミッションを担うことになったのは、消防ポンプ自動車の要ともいえるポンプを含む制御システムを担当したW.K.である。
W.K.
EV車両の制御システムを構築するにあたり、使用実績のない電動バルブや無線機器、タブレットなどを新たに導入しました。制御システムに組み込むと問題が起きることも多く、そのたびに取り付けては検証する作業を徹底しました
完成度の高い1号車を超え、新機能も盛り込まれた2号車の開発は、まさに試行錯誤の連続だった。W.K.は、M.S.をはじめとするメンバーの期待に応えるべく、経験の少なかった無線技術やアプリケーション開発の知識も吸収しながら完成を目指していった。また、日本の消防現場では、まだ電動化や遠隔操作に対して慎重な考え方もあり、M.S.を中心に、その壁を乗り越えるための説明や調整を重ねた。
こうした制御面での挑戦と並行して、車両レイアウトの設計にも徹底的に向き合った。大阪市内の道路事情や出動環境を踏まえた車体のコンパクト化が強く求められ、水タンクの搭載位置や装置レイアウト、収納スペースの確保まで一から見直した。
メンバーそれぞれの挑戦の積み重ねが、2号車を着実に完成へと近づけていった。
section.04
メンバー一人ひとりが
自身に課された責務を果たし、
想いを込めた車両・システムがついに完成。
デビューの時を迎える
同じころ、指揮支援システム開発チームも多くの課題に直面していた。
Ta.H.
私たちが目指したのは、AIやバイタルセンシング、都市データ、低軌道衛星通信、屋内位置測位、ロボットなど、さまざまな最新技術を活用し、災害現場で役立つ指揮支援システムをつくること。そして”未来社会における最適な消防活動”のかたちを社会へ提案することでした
Ta.H.が語るように、この開発はモリタグループが描く未来の消防・防災の姿を社会へ発信する重要な役割を担っていた。Ta.H.は指揮隊長や隊員への徹底したヒアリングを行い、迅速に人命救助するために現場で必要な情報や、それをどのように可視化するか検討を重ねた。
一方、指揮支援システムのハードウェア開発を担当したT.K.は、通信装置や機器を搭載するための軽量化、求められる機能の発揮に加え、消防隊員にとっての使いやすさにこだわった。
T.K.
誰も使ったことがない次世代車両だからこそ、直感的に扱えることが重要だと考えました。使いやすさは迅速な判断・指示につながりますから
T.K.は使用者視点を軸に、技術的課題を一つずつ解決していった。
2024年、2つのプロジェクトが佳境を迎えるなか、新たに参加したのが入社1年目のTo.H.だった。託されたのはEV消防ポンプ自動車、EV指揮車をはじめとする協賛車両のグラフィックデザインである。
To.H.
世界中の人が注目する場で使用される車両のデザインを任され、最初はプレッシャーでした。ですが、入社1年目の私にとって貴重な機会だと前向きに捉えて取り組みました
To.H.はモリタグループのブランドイメージを守りつつ、未来的な要素を盛り込んだ約80のデザインを創案。さまざまなモノや情報、機関がつながり、連携することを表現した。Ta.H.やメンバーの意見を取り入れながらブラッシュアップしていき、想いを込めたグラフィックデザインが完成。それぞれの車両に施された。
epilogue
実運用・実証実験を終え、
得たものは賞賛と新たな気づき。
消防・防災の未来を見据えた
メンバーの挑戦は続く
2025年4月13日、半年間にわたる大阪・関西万博が幕を開けた。現場でEV消防ポンプ自動車を操作した消防隊員からは、EVならではの静粛性や走行の安定性に加え、ポンプの操作性の高さも高く評価された。また、指揮支援システムはAIを活用した先進性が注目され、多くのメディアから取材を受けたほか、実証実験で連携した消防隊員からは早期実用化を求める声も上がった。
半年間にわたる実運用・実証実験でプロジェクトメンバーが得たのは、各方面からの賞賛や評価だけではない。次の開発につながる多くの発見であった。未来の消防活動のかたちを創り出す挑戦は、これからも続いていく。
SUMMARY
プロジェクトのまとめ
-
2019
EV消防車の基礎研究が始まる
世界的なEV普及の動きを捉え、EV消防車を開発するための基礎研究をスタート。
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2021
EV消防ポンプ自動車開発開始
基礎研究での成果をもとに、EV消防ポンプ自動車の開発プロジェクトが立ちあがる。
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2022
指揮支援システム開発開始
未来の防災を模索するなか、EV指揮車、指揮卓を核とするAIを活用した指揮支援システムが考案される。
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2023
EV消防ポンプ自動車 コンセプトモデル披露
国内最大級の消防・防災に関する展示会「東京国際消防防災展2023」にて、EV消防ポンプ自動車第1号車を参考出展。
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2024
大阪・関西万博への協賛に向け開発が加速
モリタグループと大阪市消防局との連携協定締結および、大阪・関西万博への協賛に向け、開発が本格化。
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2025
大阪・関西万博にて
実運用・実証実験大阪・関西万博において、日本初となるEV消防ポンプ自動車の実運用を実現。指揮支援システムは実証実験を行った。
DIGEST MOVIE
東京国際消防防災展2023
モリタブース
ダイジェストムービー
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EXPO2025
協賛プロジェクト
ダイジェストムービー
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M.S.
当時の日本にはEV仕様の消防車は存在せず、まさに前例のない開発への挑戦となりました